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2011年9月

2011年9月24日 (土)

ふりむいた風(4)

このストーリーではK君という風が、ある日転校生になって桃子のもとに再度現れた、そのことで「ふりむいた風」という題名になったのではないかと思います。Kくんから見れば、桃子が最後、ふりむいた風になったとも捉えられますが、どうなのでしょうか?しかし、ボーイフレンドまでいながら、K君、すなわち南条君の死の直前の桃子の最後の告白が読者の魂を揺さぶるものとなっています。これがハッピーエンドで終わっていたら、どこにでもある恋愛物語で終わっていたのだろう。

純愛の本質とは世界にただ一人の魂のかたわれに出会うことに尽きるのではないかと思う。それが現実にたとえ存在するしないは別にしても、自分の中にもう一方の異性の存在を意識に昇らせることが大切なことのように感じています。(美内すずえ先生は、この先「ガラスの仮面」でもう一方の自分、魂のかたわれについて展開しいいきます。)

エピローグでは、風がまた振り向いて、ふたりが愛し愛されることの喜びに浸っていた暖かなひとときに戻りたいと強く願ったK君の言葉で締めくくられています。彼にとって唯一愛した女性は桃子であり、周囲の人たちから冷たくされた生涯で、唯一しあわせだった彼女とのひとときに執着しているとはいえ、そこにしあわせの本質をもう一度、今のわたしたちに語りかけてくれるのではないでしょうか?

わたしは、この物語をもっと若い人たちにも読んでもらいたくて、載せてみることにしました。

エピローグ

‥‥

「きみは知ってる? 

通りすぎた風の行方を 

ページをめくり 

花びらをちぎり 

風の去ったあとも

それはそのままなのに 

風だけが行ってしまった。 

そしてそれがどんなにいい風でも 

どんなになつかしくても 

もう2度ともどってくることはない。 

でも‥

もしも風がふりむいて 

ふりむいてもう1度

たとえひとときでもそのときにもどることができたなら‥

ああ

そうなったらどんなに

どんなに

僕はしあわせ

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2011年9月17日 (土)

ふりむいた風(3)

Kくんとの淡い初恋の思い出は、桃子の家の掃除をしているところから、彼のノートを見つけるところから始まっている。高校時代の彼女にとって、Kくんは過ぎ去った風に過ぎなかった。けれど、彼が転校生として会いに来た時、それは現実の進行形の風に変わっていった。そして、いよいよ彼の正体が桃子に知れるとなったとき、初恋は、彼の死によって叶わなくなってしまう。

初恋の終局は、彼の死という形をとることによって、桃子のこころの中では永遠の想いとなってしまった。それは、現実の彼がそれ以上成長もがっかりする機会もないまま、桃子の中で時を止めたまま美化されるからだともいえる。美化されるということは、いやがおうでも、自分のこころの中にとどまることを意味する。それまで無意識だった自分の異性の側面が浮かび上がってくる。最初は、初恋の彼の姿に写し取られていた心の異性の側面が、彼の死によって桃子の内面にいやおうもなく引き戻されてしまう。そうして、彼はまさにその思い出とともに、永遠に桃子のこころの一部になってしまったのだと思う。

「風はいってしまった風はもう2度ともどってきはしない耳もとを通りすぎたときの髪を誘ったときのあの涼しくさわやかな感じはいつまでも残るのにそれがたとえどんなに昔でも

記憶の扉を開きさえすればいつでもあの感じはよみがえってくるのに

それなのに風は空にまぎれて2度と

帰ってきはしない

現実の彼はもういない、桃子にはその風がまた吹いてくれることを祈る。なぜなら、また風がふりむくことがなかったら、桃子はこの先どんな異性との出会いがあったとしても、心を閉ざされっぱなしになってしまうだろうから。まさに純愛とは、ただ自分にだけ吹くひとつの風、その感触を頼りに、どこまでも願わくばもう一度「振り向いて欲しい」と思う。そしてそれはふだんの、日常の私たちには届かない世界なのかもしれない。、私たちはいつも日常の雑事に追われて、機械的に生きている、いや生活している部分が多いから、当たり前のことに感謝する気持ちをどうしても忘れ勝ちになってしまう。そうやって、日常に埋もれ、新鮮な感覚を研ぎ澄ますことを怠っていると、時たま吹いてくる暖かな風、なじみのある風の感触をことさら気に留めるでもなく、受け流してしまう。

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2011年9月10日 (土)

ふりむいた風(2)

ある日高校に、転校生がやってきた。南条君という、その子はいつも桃子に視線を投げかけていた。

高校で学園祭のあった日、南条君が落とした定期券を拾った桃子が、彼の家に届けに行ったときに、突然めまいに襲われて倒れ込む南条君。医者から手当を受けたベッドに横たわっているとき、桃子は彼の腕にやけどの跡があるのを見て、ふと、K君のことを思い出し、胸が温かく九なるのだった。

幼いころ楽しく遊んだ記憶が甦った桃子は、いつしかそれが初恋だったことを知る。初恋の相手が突然現れて、とまどう桃子の過程が描き出される。二度目の南条君へのお見舞いの帰りがけ、忘れ物を取りに行った時、ドアの向こう越しで、桃子の飲みほしたティー?カップにそっとくちびるをつける南条君。それを見た桃子は彼を意識しだす。

一方で、転校生の南条くん、つまりKくんは子供のころからおじいちゃんと暮らし、母は再婚し、再婚先の子供ばかりをでき愛して、彼のことを顧みることは無かった。そんな彼が唯一愛し愛されたと記憶する小学生時代の桃子に一目会いたくて、目に焼き付けておきたくて、ひとりでこの町に転校してきたのだった。また南条君は、余命の短い命であった。そこで、彼は死ぬ前に是非、初恋の相手、桃子にあっておきたかった。しかし、桃子には君という恋人もいて高校生活を楽しんでいる。

ある日、みんなでピクニックに行くことになった。そこで桃子は南条君が話す思い出の数々が、桃子の知ってるK君との記憶の日々に重なってることに気づく。

桃子の心の中のモヤモヤが整理できずにいた桃子はボーイフレンドの二の宮くんと付き合うのを断ろうとする。そこで彼から転校生の南条くんが実はあのK君だったことを知る。桃子はKくんに会いに行ったが彼は自分だと名乗りでなかった。彼はすでに不治の病に侵されていて、余命がもう尽きかけていた。

南条くんがいよいよ亡くなろうとするとき、桃子は二の宮と一緒に彼の元に会いに行く。しかし、悪天候で、列車が立ち往生し、途中の駅から電話をかける。そこでK君は桃子と思い出を語り合う。

桃子が、

「Kくんそのあとねみんながひやかしたの。Kくんを好きだったんだろうって。ほんとよKくんあなたが大好きだった。とても大好きだったのよKくん、‥‥Kくん?Kくん!Kくん!Kくん!  好きよ!大好きなのよ!Kくん!‥」

Kくんは息をひきとった。

最後に恋人の二の宮君を振り切ってまで、大切なK君の想いでのノートを抱きかかえてその場を立ち去る桃子。付き人の「これからは思い出してやってください。彼はあなたの思い出の中でしか生きることはできないのですから」の言葉に桃子は顔をこわばらせるのだった。

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2011年9月 3日 (土)

ふりむいた風(1)

これは美内すずえ先生が昭和48年6月刊セブンティーンで発表した作品です。

プロローグで始まる一文は主人公桃子の部屋?の開け放たれた窓に風がゆるやかに入ってくる光景から始まる。

風は

いってしまった風は

もう2度ともどってきはしない

耳もとをとおりすぎたときの

髪を誘ったときの

あの涼しくてさわやかな感じは

いつまでも

残るのに

それがたとえ

どんなに昔でも

記憶の扉を

開きさえすれば

いつでもあの感じは

よみがえってくるのに

それなのに風は

空にまぎれて

2度と

帰ってきはしない

主人公の桃子は、高校生になって、ボーイフレンドの二の宮君と付き合って楽しい生活を送っていた。

ある日部屋の掃除をしていたら、一冊の古いノートが落ちてそれを拾い上げて読んだ。それは借りたままのK君のノートだった。そこには、小学校のころ、自分を励ましていたK君との思い出が甦っていた。K君は家が貧しくて、あばれんぼうで、友達もできず、一人孤独だった。そんな彼に桃子は最初は隣の席になったとき、いやで泣いていたが、そのうちにそんなに悪い子ではないと桃子は思った。ある日鉛筆を貸してあげた。K君はそれをきちんと削って桃子に返した。それからK君は次第に桃子にやさしくなった。桃子が熱湯をかぶりそうになったとき、身をていして守ってくれた。

あるとき、K君は家の事情で引っ越すことになった。それまでk君が得意だった折り紙、桃子に色んな折り紙の折り方を教えてはくれなかった折り紙の数々を、桃子の机の上にたくさん置いて去って行った。桃子は、会ってさよならもできずワーワーと泣くばかりだった。桃子はそれから折り紙を折るのが上手くなった。

幼かった頃の記憶が桃子に甦る。

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